単位の変換について#
またも、単位系の話題。
Gauss単位系とSIの間の単位の変換について考える。 実際的には、教科書の付録などには換算係数の表が収録されており、 必要に応じて参照すればよいのであるが、ここでは係数を求めるために必要な考え方、手法について述べる。
換算表も掲載しておいた。この種の換算表においては、次元的にバランスしない量を等号で結んだ(あいまいな)等式が散見される。 中には注意深くそのような等号を避けている文献もあるが、逆に、実際に使う段になって何を等置してよいか迷うことになる。 ここでは次元的に正しい等号によって、等置すべきものはすべて結んだ。 結果として、物理量としての関係と単位の大きさの関係を同時に表現する換算表が出来上がった。 また、SIを基準にしているので、現代の学習者が過去の文献を解読する際に使いやすいものとなっている。 つまり、「SI派のための単位換算表」である。
とはいえ、単位換算表の作成のために、面倒で込み入った計算をしてみると、あらためて、単位換算表廃絶の必要性が痛感される。 最近、理科年表の換算表にちょっとした間違いがあって、長年訂正されないまま放置されていたという話があった。 単位系の換算の煩雑さを示す好例である。 (実は、このノートはその間違いを自分なりに確認するために作成したものである。)
このような混乱に終止符を打つためには、単位系を1つに集約するしか選択肢はないだろう。 1つ選ぶとすれば、当然 SI ということになる。 論文や教科書を執筆する立場にある人が、少しの努力を払って SI で表現するように心がければ、 多くの読者が換算表のお世話にならず済むようになるのだが。
半世紀以上も前に Sommerfeld (1948) や Stratton (1941) といった 物理学の大家が筆を尽してMKSA単位系 (現在のSI) の優位性と単位系統一の必要性を説いている。 にも拘わらず、現代になってもGauss単位系の教科書 (たとえば、Franklin, 2005) が新たに出版されるのを見ると、 因習からの脱却の困難さが痛感される。それほど極端でないにせよ、 「本当はGauss単位系を使いたいのだが、世の流れに逆らえず、仕方なく SI を採用する」という 著者の言い訳がよく見られることも大変残念である。