真空のインピーダンスと単位系

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真空のインピーダンスと単位系#

真空のインピーダンス \(Z_0\) は電磁気学において本質的な役割を担う普遍定数である. しかし, 過去において広く用いられてきたCGSガウス単位系において, \(Z_0\) は無次元量1になってしまうため, 現在に至っても, その意義や存在そのものが十分認知されていない. ここでは, SI単位系で表された電磁気学の諸式を相対論的に整理する, 変数の正規化によって自然単位系に移行する, あるいは単位の大きさを定義するなどの場面において \(Z_0\) が中心的な役割を果たすことを示す.

M. Kitano(2009) , The Vacuum Impedance and Unit Systems, 3-8. In IEICE Transactions on ElectronicsE92-C (1). pdf, pdf(日本語)

とくに, 以下のような誤解 を持ってしまっている方に一読をお薦めする.

  • 真空のインピーダンス \(Z_0\) は工学的に重要なパラメータであるかも知れないが, 理論構成上はそれほど意味はない.

  • 電磁気学において \(\vct D\), \(\vct H\) は補助的な量であり, \(\vct E\), \(\vct B\) だけが重要である. とくに真空中では, 前者はほとんど意味をもたない.

  • CGSガウス単位系はMKSA単位系(SI)より, 理論を扱う上で優れているが,大勢には逆らえないので仕方なく後者を使っている.

(これらはよく見られる主張だが, いずれも誤りであると筆者は考える. 残念なことに定評ある教科書においてすら散見される.)

\(Z_0\) を中心に据えて電磁気学の諸公式を相対論的に整理することによってMKSA単位系の合理性が明らかになる.