電磁気の単位系

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電磁気の単位系#

テキスト「マクスウェル方程式」では単位系比較の問題にはあまり触れなかった. それはSI(国際単位系)以外で書かれた文書を読む機会が殆どなくなってきていると 判断したからである. 一時代前の教科書には必ず単位に関する章や付録があり, 目も眩むばかりの単位系間の対応表が収録されていたことを思うと, 現在の読者は幸せである. これは共通単位メートルの提案以来200年以上にわたる, 合理性を信条とする先覚者たちの地道で我慢づよい努力の成果である.

しかし, 電磁気学に関して長く併存が続いたCGSガウス単位系については, 隠れた支持者が少なからず残っているようである. 真空の誘電率, 透磁率が1になるという皮相的理由からである. また, SIで書かれた教科書でも, AB効果, ゲージ,微細構造定数といった 理論的な部分にうっかりガウス単位系の式が残っている場合があるので注意が必要である.

ガウス単位系は自然単位系に近いというのが支持の理由であったりするが, 実は両者は論理的には全く別のものである. ガウス単位系におけるアンペール・マクスウェルの式の 電流密度項に因子 1/c が現れるのを自然なことだと受け止められる人はどれだけいるだろう. また、電荷保存の式の時間微分項に自然単位系とは違って 1/c がつかない理由を 気にしている人はどれだけいるのだろう。

漠然と想起されることの多い

SI --> ガウス単位系 --> 自然単位系

という図式は全く正しくない。 SIからガウス単位系を経由せず自然単位系に移る操作はより自然なものである。

今後は, 教育面でもCGSガウス単位系の仲介なしの, SIと自然単位系の純粋2本だてを徹底するのが望ましいだろう.