机の上で光速を測る#
19世紀の半ば, WeberとKohlrauschは電気力を基準に定められた電荷の大きさと
磁気力を基準に定められた電流から決まる電荷の大きさの比を求める実験を行った.
この量は, 当時使われていた2つの単位系, すなわち, 静電単位系 (esu), 電磁単位系 (emu) における
電荷の大きさの比であり, 速度の次元を持っている.
測定結果は \(3.1\times 10^8\,\U{m/s}\) となり, 当時までに直接的に測定されていた光の速度と符合した.
Maxwellはこれを偶然の一致ではなく, 光が電磁気的な波動であることの帰結であると確信し, その理論的裏付けを行うとともに, 自分自身でも実験を行った. 彼は「この光速の測定法において、光は測定器を見るのにしか使われていない」と冗談まじりに述べている. 長年追求されてきた光の本性がついに明らかにされたのである.
ここでは, エレクトロニクスの助けを借りた, 現代版 Weber-Kohlrausch の実験を提案する. 真空の透磁率と真空の誘電率を, それぞれコイルとコンデンサのリアクタンス測定から求め, それらの値から光速を知ることができるのである. また, LC共振器の共鳴周波数から \(c_0\) を測る方法も提案する. これらの実験では、同時に真空のインピーダンス \(Z_0\) の値も定めることができる.
入手容易な材料と装置で光速を 1% 程度の正確さで求めることができる. 回路の簡単な実験ではあるが, 電磁気学の基礎や歴史に関する考察を伴うものであり, 大学レベルの物理実験に適している.
[1] 北野正雄, 大学の物理教育 21, 126 (2015) DOI
[2] 小林弘和, 北野正雄, 大学の物理教育 21, 130 (2015) DOI