スピントロニクスの不思議#
kitano
最近、スピントロニクス分野の若手の発表を聞いて驚いたことがある。 グラフの横軸のラベルが H [mT] となっていたのである。 思わず、B [mT] か H [mA/m] ではないですかと質問したのだが、 意味が通じなかったのか、話がかみ合わないまま終わってしまった。
後日、スピントロニクス関係の論文をいくつか眺めてみたが、 磁場に関して実に様々な表記がされていることが分かった。 H [T] も確かにあり、さらには、H [G], B [Oe] など 古い単位系も大切に保存されて様子が伺えた。
確かにGauss単位系では、B と H は同じ次元の物理量であり、 真空中では B = H が成り立つので、このような混用は許されるのであろう。 G(ガウス) = Oe(エルステッド) と書いても間違いとはいえない。
しかし、SI では、B と H の次元は全く異なっているので、 このような混用は明らかに間違いである。T(テスラ) = A/m は成り立たない。 H をテスラで表すのは不適切である。 (H は磁束密度であると強弁することも可能かもしれないが、単に混乱を増すだけである。)
3元単位系(ガウス単位系)と4元単位系(SI)の相違を考えずに、古い慣習をそのまま引き継いでいるのである。 これは平面幾何学の定理を機械的に空間幾何学に当てはめるのと同じほどの酷い間違え方である。
最先端分野であるスピントロニクスが古い単位系やその考え方を引きずり、 ガラパゴス化しているのは奇妙なことである。 新しい酒を古い革袋に入れてどうするのだろう?